言霊

注)プライバシー保護のため、音声は変えてあります。
「いやー、怖かったですよ。言ったことが実際に起こるわけですから。
いえね、私、今日まで福岡で学会だったんですよ。
行く前に『今回はいやな予感がする』とか『神風』
とか言ってるじゃないですか。
神風については説明要らないですよね。台風直撃ですよ。
いやな予感のほうはあまり詳しくいえないんですが、
私にとって大事な人が体調壊して入院しちゃったんですよ。急遽。
学会では屈辱の座長質問でしたし。『葉を計測のした。』っていうような
ミスに気づかずプレゼンやっちゃったし。
挙句帰りの飛行機が少し遅れたっていうのもあるんですけど、
乗換えで楽をしようと京急へのったら都営とつながらないんでやんの。
荷物抱えて階段上り下りですよ。
終電近いから酔っ払ったおっさんが電車の出口の真ん中
しかも摩擦で鼻先を火傷するくらいドアに近い場所に立って待ってるし。
おっさん以上の座った目(多分光線か何か出てたと思います。発言者註)
で直進しましたけど。ぎりぎり終電に間に合いましたよ。
普通にモノレール使えば一時間以上速くついたでしょうがね。
家に着けばカードキーが見当たらず、毛づくろいをする猿のように
かばんを掻き分けていたら、外人さんの
集団が自動ドアのなかから開けてくれました。
あけてくれた彼女の目は確実に汚れた子犬を見る目をしていましたよ。
ファック。」